医学を学ぶ者なら一度は通る道「医学生症候群」

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「医学生症候群」という病名をご存じだろうか。正確には疾患と言えないかもしれないが、医学に触れたものならおそらく一度は経験したことがある現象であり、特に医療関係者の間ではよく知られている。

症状が当てはまる!?

医学生が日々受ける講義の中にはさまざまな疾患が登場する。そんな中で、ふと、その疾患の症状がすべて自分に当てはまっているように感じる瞬間がある。そんなとき、どんどん自分がその疾患を患っているのではないかと不安になりついには人によってはその「症状」が悪化したり、鬱状態に陥ったりすることもあるという。これが医学生症候群である。

医学生症候群は医学部関係者の間ではよく知られている。海外ではmedical students’s disease,もしくはmedical student syndrome,hypochondriasis of medical studentsなどと呼ばれいくつもの研究論文まで書かれているのだ。それほどよくみられる現象であるといえる。

医学生に限らず発症する

医学生症候群はなにも医学生に限って起こるわけではない。最近は以前と違いインターネットなどを使って一般の人も簡単に医学情報にアクセスできるようになったので、医学教育を受けていない一般人でもネットで見かけた重大な病気の症状が自分に当てはまるような気がしてならず不安で不安で仕方ないなんてことが起こっていると指摘されている。これらも一種の医学生症候群であると言えるだろう。このサイトも医学生症候群の患者を増やす一助となっている可能性を考えるととても心苦しい・・・(笑)

実は私にも心あたりはある(汗)

なにを隠そう、実はこの私自身医学生症候群にかかっていたのではないかという経験があるのだ。

2年生のころ、私は感染症の講義を受けていた。その日の講義のテーマはみなさんもご存じ「後天性免疫不全症候群」、いわゆるエイズについてである。最初はいつものように何気なく講義を受けていた私は、次第に自分がHIV に感染しているのではないかという恐怖に取りつかれるようになる。

「エイズの原因菌であるHIVの感染のほとんどは性行為によって起こる」。こう聞いたとき、私は「なるほど、これは私にはまったく無縁の疾患であろう」と安心したわけだが、次の言葉を聞いた瞬間凍り付いた。

「また、HIVは血液を介して感染するウイルスである。つまり、HIV感染者の血液に曝露したときに感染する可能性がある」

通常日常生活では他人の血液に曝露される機会なんてほとんどないだろう。しかし私にはあったのだ。なぜなら当時解剖実習の真っただ中であったからだ!解剖実習をしているとたとえばご献体の肋骨の断面によって手を傷つけて怪我をするなんてことはよくある。私も何回か手を切ってしまい、そのたびに確実に献体の血液に曝露されている(気がした)のだ。私の中ではどんどん不安が膨らんだ。もしも自分が解剖したご献体の方がHIV感染者だったら・・・?今は感染直後だから症状が出ていないだけで、忘れたころにいきなりカポジ肉腫が現れたら・・・?それはもう毎日毎日不安で仕方なく、自分がHIVに感染したと思い込み、そのことで頭がいっぱいになって全く勉強に集中できなくなってしまったときもあった。

こんな私の医学生症候群を治療したのはHIV検査であった。不安で不安で仕方なかった私はついにHIV検査を受けに行くことを決意したのだ。結果は当然「陰性」。そこで初めて私は数か月にもわたる不安から解消されたのであった・・・。

今思えばホルマリン固定された献体の血液内でHIVが生きているわけがなく、まったく馬鹿らしい心配だったのだと思うのだが、その当時は本当に毎日が不安でしかなかった。もし皆さんが医学生症候群と思しき不安に駆られたら、医師の元を訪ねて一笑してもらうのが最も効果的な治療法かもしれない。

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コメント

  1. 臨床心理を学ぶ名無し より:

    私も臨床心理を学ぶ上で、精神医学を(医学部の方に比べれば全然ですが)学んでいます。
    その際に、これは当てはまる、どうしよう、と不安になることは多々ありました。その度に図書館やインターネットを駆使して症状例を詳しく分析し、「自分はこんなにひどくない、大丈夫だ」と納得するまでがいつもの流れになっていました。
    このような症候群として名前があるのにはビックリです!
    とても勉強になりました☺️🙌✨✨